葬儀の服装で迷う男性へ。急な弔問でも失礼のない「正解」とマナーの基本
身近な方に不幸があった際、悲しみの中で真っ先に準備しなければならないのが葬儀の服装です。特に男性の場合、「黒いスーツなら何でも良いのでは?」と思われがちですが、実はビジネススーツと礼服(ブラックフォーマル)には明確な違いがあります。
「急なことで準備が間に合わない」「手持ちのスーツで参列しても大丈夫だろうか」と不安を感じている方のために、マナーのプロの視点から、通夜・葬儀・告別式における男性の正しい服装について詳しく解説します。
1. 葬儀・告別式における男性の基本服装(ブラックスーツ)
お通夜や葬儀、告別式に参列する際、男性の最も標準的な服装は**「準礼服(ブラックスーツ)」**です。
ビジネス用の黒スーツとの違い
一見、同じ黒色に見えますが、冠婚葬祭用のブラックスーツ(礼服)とビジネススーツには大きな違いがあります。
色の深み: 礼服は「漆黒」と呼ばれる深く濃い黒色をしています。光の反射を抑える加工がされており、ビジネススーツと並ぶとその色の差は歴然です。
生地の質感: 礼服は光沢のないウール素材が基本です。ビジネス用は耐久性を高めるためにポリエステルが混ざっていたり、うっすらと光沢やストライプ模様が入っていたりすることがありますが、これらは葬儀の場には適しません。
ジャケットの選び方
デザイン: シングルでもダブルでも問題ありません。最近の主流はシングルですが、体型や好みに合わせて選んでください。
ベント: 裾の切り込み(ベント)は、ないもの(ノーベント)が最もフォーマルです。センターベントでも失礼にはあたりませんが、サイドベンツは避けるのが無難です。
2. シャツ・ネクタイ・小物の重要ルール
スーツ以上に目につきやすいのが、Vゾーンを中心とした小物類です。ここで手を抜くと、全体の印象がだらしなく見えてしまいます。
ワイシャツは「白の無地」一択
襟の形: レギュラーカラー、またはワイドカラーを選びます。ボタンダウンシャツはカジュアルなアイテムと見なされるため、葬儀の場では厳禁です。
装飾: 刺繍や柄が入ったものは避け、清潔感のある真っ白なものを用意しましょう。
ネクタイは「黒の無地」で結び方にも注意
色と柄: 光沢のない黒無地を選びます。
結び方: 「プレーンノット」などシンプルな結び方が適しています。
ディンプル(くぼみ): 普段のビジネスシーンではネクタイの結び目にくぼみを作りますが、お悔やみの場では華やかさを抑えるために、ディンプルを作らないのがマナーです。
ベルトと靴下
ベルト: 黒のシンプルな本革製を選びます。バックルが大きく派手なものや、ブランドロゴが目立つものは避けましょう。
靴下: 黒の無地で、座った時に肌が見えない程度の長さがあるものを選びます。
3. 足元で見られる!靴の選び方とNG例
「お洒落は足元から」と言いますが、葬儀においても靴は非常に重要なチェックポイントです。
理想的な靴
内羽根式のストレートチップ: つま先に横一線のラインが入ったタイプが、最もフォーマル度が高いとされています。
プレーントゥ: 装飾のないシンプルなデザインも許容範囲です。
避けるべき靴
金具付き(モンクストラップなど): 金属の光沢は殺生を連想させるため、避けるべきです。
スエード・型押し: 殺生を強く連想させる素材や、カジュアルすぎる素材はNGです。
ローファー: 脱ぎ履きは楽ですが、あくまでカジュアル靴の部類に入るため、本来は葬儀に適しません。
4. お通夜に参列する場合の「略装」について
かつては「急いで駆けつけた」という意味を込めて、お通夜には平服(ビジネススーツ)で参列するのがマナーとされていました。しかし、現代ではお通夜が本葬に近い形で行われることが多いため、最初からブラックスーツで参列しても全く失礼にはなりません。
もし、仕事先から直接向かうなど、どうしても着替えられない場合は以下の点を確認してください。
スーツの色: 濃紺やダークグレーなど、可能な限り黒に近い落ち着いた色であれば容認されます。
ネクタイの交換: コンビニエンスストア等で黒のネクタイを購入し、付け替えるだけでも印象は大きく変わります。
5. 見落としがちな持ち物と身だしなみ
服装が整っていても、持ち物や髪型でマナー違反をしてしまうことがあります。
数珠(じゅず)
仏式の葬儀では必須アイテムです。自分の宗派のもの、または略式数珠を準備しましょう。貸し借りはマナー違反ですので、自分専用のものを一つ持っておくのが安心です。
袱紗(ふくさ)
香典袋を裸で持ち歩くのは失礼です。必ず袱紗に包んで持参しましょう。慶事用(赤やピンク)ではなく、弔事用(紺、紫、グレーなど)を使用します。紫色は慶弔両用として使えるため便利です。
髪型とひげ
髪型: 前髪が目にかからないように整え、清潔感を意識します。派手な整髪料の香りは控えましょう。
ひげ: 基本的には剃るのがマナーです。整えている場合でも、不潔な印象を与えないよう注意が必要です。
6. 冬場・夏場の体温調節とマナー
季節によって服装の悩みは尽きませんが、基本のブラックスーツを崩さないことが大前提です。
夏場の対策
暑い時期でも、会場内ではジャケットを着用するのが正式なマナーです。移動中は脱いでいても構いませんが、受付を通る前には必ず着用しましょう。最近では「半袖のワイシャツ」を着用する方も増えていますが、ジャケットを脱がないことが条件です。
冬場のコート
葬儀会場に入る前に脱ぐのがルールです。
色: 黒、紺、グレーなどのダークカラー。
素材: ウールやカシミヤが一般的です。ダウンジャケットや、殺生を連想させる毛皮・レザーコートは避けましょう。
7. まとめ:大人の男性として恥ずかしくない装いを
葬儀の服装で最も大切なのは、故人を偲び、遺族に寄り添う**「哀悼の意」**を形にすることです。個性を出す場ではないからこそ、決まったルールを守ることが相手への敬意に繋がります。
ブラックスーツ(礼服)を着用する
小物は黒と白の無地で統一する
光り物や殺生を連想させる素材を避ける
この3点を押さえておけば、急な参列でも慌てることなく、落ち着いて最後のお別れに向き合うことができるはずです。万が一の時に備え、一度クローゼットの中を確認し、サイズ感や汚れがないかチェックしておくことをおすすめします。