香典マナー:葬儀後の挨拶状(お礼状)文例とマナー
1. 挨拶状の基本マナーと構成要素
香典返しの際に添える挨拶状は、故人への弔意と感謝を伝える公的な文書であり、以下のマナーを守る必要があります。
必須マナー
句読点(、や。)は使わない:弔事では「滞りなく終わる」ことを願うため、「区切り」や「終わり」を意味する句読点は使用しません(スペースや改行で区切ります)。
時候の挨拶は不要:通常の挨拶状と異なり、頭語(謹啓など)の直後に本文に入ります。
薄墨は使わない:葬儀直後の会葬礼状とは異なり、忌明けの挨拶状は濃い墨で書きます。
重ね言葉は避ける:「重ね重ね」「引き続き」など不幸を繰り返すことを連想させる忌み言葉は使いません。
「拝啓・敬具」は使わないのが一般的:より丁重な**「謹啓・謹白」**を使用します。
挨拶状の構成要素(定型文)
頭語:「謹啓(きんけい)」
時候の挨拶(省略)
弔意への御礼:故人の葬儀・御厚志(ごこうし)に対する感謝を述べる。
忌明けの報告:宗派ごとの儀式が無事済んだことを報告する。
香典返し送付の連絡:供養のしるしとして品物を送る旨を伝える。
略儀のお詫び:本来は直接挨拶すべきところ、書面で失礼する旨を伝える。
結語:「謹白(きんぱく)」
日付(忌明けの日)、差出人(喪主の氏名)
2. 【宗教別】香典返しに添える挨拶状の文例
宗派によって「忌明けの儀式」や「亡くなること」を指す言葉が異なります。
文例1:仏式(浄土真宗を除く一般的な宗派)
仏式では、故人の魂が成仏する**四十九日(しじゅうくにち)**をもって忌明けとします。
項目 | 記載内容 |
頭語 | 謹啓 |
本文冒頭 | 先般 亡父 〇〇 儀 永眠の際は ご多忙の中にもかかわらずご懇篤なるご弔慰を賜り 厚く御礼申し上げます |
忌明け報告 | お陰をもちまして この程 四十九日の法要を滞りなく相営みました これもひとえに皆様のお陰と心より感謝申し上げます |
香典返し | つきましては 供養のしるしまでに心ばかりの品をお届けいたしましたので 何卒ご受納くださいますようお願い申し上げます |
結び | 早速拝眉の上御礼申し上げるのが本意でございますが 略儀ながら書中をもって謹んで御挨拶申し上げます |
結語 | 謹白 |
日付・氏名 | 令和〇年〇月〇日 〇〇(喪主名) |
【用語の注意点】
「満中陰」:関西などでは四十九日を「満中陰(まんちゅういん)」と表記することがあります。
「忌明け」「忌明」:地域や宗派によっては「満中陰志」を使用します。
浄土真宗:故人はすぐに仏になるため「〇〇の法要を滞りなく相営みました」の表現はそのまま使えますが、文頭の「亡父 〇〇儀 永眠の際は」を**「故父 〇〇儀 逝去の節は」**などに置き換えることがあります。
文例2:神式(神道)
神道では、故人が家の守護神となる**五十日祭(いかじゅうにちさい)**をもって忌明けに相当する節目とします。
項目 | 記載内容 |
頭語 | 謹啓 |
本文冒頭 | この度 故父 〇〇 儀 帰幽(きゆう)の節は ご鄭重なる御玉串料(おたまぐしりょう)を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます |
忌明け報告 | お陰をもちまして この程 五十日祭を滞りなく相済ませることができました これも偏に皆様のお陰と深謝いたす次第でございます |
香典返し | つきましては 偲草(しのびぐさ)のしるしまでに心ばかりの品をお送りいたしましたので ご受納いただけますようお願い申し上げます |
結び | 本来であれば拝眉の上 御礼申し上げるべきところ 略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます |
結語 | 謹白 |
日付・氏名 | 令和〇年〇月〇日 〇〇(喪主名) |
【用語の注意点】
「亡くなること」を**「帰幽」、香典を「御玉串料」「御神前」、返礼品を「偲草」**など、仏教用語を避けた表現を使います。
文例3:キリスト教式(カトリック・プロテスタント)
キリスト教には「香典」「忌明け」という概念はありませんが、弔慰への感謝と記念の報告を行います。
項目 | 記載内容 |
頭語 | 謹啓 |
本文冒頭 | 先般 故母 〇〇 儀 召天(しょうてん)の際は ご懇篤なるご弔慰ならびに御花料を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます |
忌明け報告 | お陰をもちまして 去る〇月〇日に **昇天記念会(または記念式)**を滞りなく相済ませましたことをご報告申し上げます |
香典返し | つきましては 感謝のしるしまでに心ばかりの品をお届けいたしましたので 何卒ご受納くださいますようお願い申し上げます |
結び | 本来であれば直接お目にかかり御礼を申し上げるべきところ 略儀ながら書中をもってご挨拶申し上げます |
結語 | 謹白 |
日付・氏名 | 令和〇年〇月〇日 〇〇(喪主名) |
【用語の注意点】
「亡くなること」をカトリックでは「帰天(きてん)」、プロテスタントでは「召天」と表現します。
忌明けの節目は、カトリックでは「追悼ミサ(30日目)」、プロテスタントでは「召天記念日(1ヶ月後の召天記念式)」など、宗派や教会によって異なります。
返礼品には**「志」または「御礼」**の熨斗(のし)を使用します。
文例4:無宗教・宗教不明の場合
特定の宗教色を避けた汎用的な文面です。
項目 | 記載内容 |
頭語 | 謹啓 |
本文冒頭 | 先般 亡祖父 〇〇 儀 永眠に際しましては ご丁重なるご厚志を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます |
忌明け報告 | お陰をもちまして 諸事万端を滞りなく相済ませることができました 生前に故人が賜りましたご厚情に 心より感謝申し上げます |
香典返し | つきましては 謝意を表したく心ばかりの品をお届けいたします 何卒お納めくださいますようお願い申し上げます |
結び | 本来であれば直接お目にかかりお礼を申し上げるべきところ 略儀ながら書中をもってご挨拶申し上げます |
結語 | 謹白 |
日付・氏名 | 令和〇年〇月〇日 〇〇(喪主名) |