【失礼のない心遣い】香典返しで失敗しないための「品物・金額・マナー」徹底注意点
ご葬儀でいただいた香典は、故人への供養の気持ちや、ご遺族への相互扶助の想いが込められたものです。そのご芳志(ごほうし)に対して、感謝の気持ちを込めて贈るのが香典返しです。
しかし、弔事のマナーは地域や宗派によって違いがあり、失礼にあたらないか心配になることも多いでしょう。ここでは、香典返しで特に注意すべき「タブー」「相場」「時期」の3つのポイントを解説し、心遣いが伝わるお返しをするための具体的なアイデアをご紹介します。
1. 品物選びの3大タブー:絶対に避けるべきもの
香典返しは「不祝儀を後に残さない」という意味合いがあるため、**消耗品(消えもの)**を選ぶのが基本です。反対に、おめでたいことや殺生を連想させる品はタブーとされています。
タブーな品物 | 理由・意味合い | 適切な対応策 |
生もの(肉・魚など) | **「四つ足生臭もの」**と呼ばれ、「殺生」を連想させるため。仏教の教えに反するとされています。 | カタログギフトを利用すれば、先方が肉や魚を選んでも問題ありません。 |
慶事の品 | 鰹節、昆布、お酒(祝いの席で振る舞うため)や、紅白・金銀の派手なパッケージ、鶴亀・松竹梅などの縁起物モチーフのお菓子。 | 落ち着いた色合いの包装紙を選び、お茶や海苔、シンプルな焼き菓子(個包装)といった「消えもの」にします。 |
長く残るもの | アクセサリー、置物、刃物など。「不幸を後に残さない」という考え方に反するほか、刃物は「縁を切る」という意味を連想させます。 | 実用性の高い上質なタオルや、誰もが使える洗剤、石けんなどの消耗品を選びます。 |
【品物選びのヒント】
最近は、贈る側の負担が少なく、受け取った方が自由に選べるカタログギフトが最も人気です。金額もコースで分けやすく、タブーの品を直接贈る心配がないため、多くの方におすすめできます。
2. 金額の相場:「半返し」が基本だが例外も考慮する
香典返しで失礼にならないための金額の目安は、いただいた香典の金額の**「半返し(半分)」または「3分の1返し」**が一般的です。
2-1. 一般的な相場と例外
基本の相場: いただいた金額の3分の1から半額程度の品物を選びます。
例外(1)高額な香典: 故人が一家の働き手だった場合や、高額(例えば5万円以上)の香典を親族からいただいた場合は、ご遺族の負担を考慮し4分の1返しなど、相場より少なめにしても失礼にはあたりません。これは、相互扶助の意味合いが強いためです。
例外(2)連名での香典: 職場や団体から連名で少額ずついただいた場合は、全員で分けられる菓子折りなどを忌引き明けの出勤時に持参する形で済ませることが多いです。
2-2. 金券・商品券についての注意点
原則: 現金や商品券、金券は、金額が明確にわかってしまうため、目上の方やマナーを重んじる方へ贈るのは避けるのが無難とされています。
最近の傾向: 一方で、相手に自由に選んでほしいという配慮から、金券やQUOカードなどを贈るケースも増えています。贈る場合は、相手との関係性を踏まえて慎重に判断しましょう。迷う場合は、カタログギフトの方が無難です。
3. 時期と「のし(掛け紙)」のマナー
香典返しは「いつ」「どのような形で」贈るかも重要なマナーです。
3-1. 贈る時期:忌明け(四十九日)後が基本
正式な時期: 仏式では、故人が亡くなってから四十九日(しじゅうくにち)の法要を無事に終えた忌明け(きあけ)後、1カ月以内に贈るのが一般的です。これは、弔事が一段落したことを報告する意味も兼ねています。
当日返し(即日返し): 最近では、葬儀当日に参列者全員に一律の品物(2,000円〜3,000円程度)を渡す**「当日返し」**も増えています。この場合、高額な香典をいただいた方には、後日改めて差額分をプラスした品物を忌明け後に郵送します。
3-2. 掛け紙(のし)と挨拶状のマナー
香典返しでは、慶事の「のし」ではなく**「掛け紙(かけがみ)」**を使用します。
項目 | 正しいマナー | 注意点 |
水引 | 黒白の「結び切り」が一般的。不幸が二度とないように、固く結び解けないという意味が込められています。(関西など一部地域では黄白も使用) | 蝶結び(何度でも結び直せる)は慶事用のため絶対に使いません。 |
表書き | 宗教・宗派を問わず使える**「志(こころざし)」**が最も一般的です。 | 仏式では「満中陰志」、神式では「偲び草」など地域や宗派によって異なる場合があります。 |
名入れ | 水引の下には、喪主の姓を入れるのが一般的です。(例:〇〇家) | |
挨拶状 | 香典返しを郵送する場合は、**必ず挨拶状(お礼状)**を添えます。忌明けの報告と感謝の意を伝える大切な書状です。 | 挨拶状では句読点(、や。)を使わないのが正式なマナーです。(区切りをつけず滞りなく進むようにという意味が込められています) |
4. 辞退された場合の対応
香典袋に「香典返しは辞退いたします」という旨が書かれている場合は、その心遣いを尊重し、香典返しは行いません。
しかし、何もお返ししないのは心苦しいという場合は、丁寧な挨拶状を送り、感謝の気持ちだけを伝えるのが最も丁寧な対応です。また、親しい間柄であれば、後日改めてお中元やお歳暮といった別の機会に、改めて喪主の連名で季節の贈り物をすることもあります。
香典返しは、単なる返礼品ではなく、「無事に法要を終えたことの報告」と「いただいたご厚意への心からの感謝」を伝えるものです。相手を想い、失礼のないよう、一つひとつのマナーを丁寧に守りましょう。