香典マナー完全ガイド:宗教に合わせた「言葉選び」と「袋の選び方」
香典は故人を偲び、遺族の負担を軽減するために贈るものです。その際、故人の信仰する宗教・宗派を無視した表書きを選んでしまうと、遺族に対して不快感を与えてしまう可能性があります。
ここでは、日本で一般的な仏教、神道、キリスト教の葬儀における香典の正しいマナーを、言葉(表書き)と香典袋(不祝儀袋)の選び方に分けて解説します。
1. 仏教(仏式)における香典マナー
日本の葬儀の約9割を占める仏式ですが、宗派によって表書きを使い分ける必要があります。特に**「御霊前」と「御仏前」**の使い分けが重要です。
1-1. 表書きの使い分け
宗派 | 儀式・時期 | 適切な表書き | 備考 |
一般的な宗派 (浄土真宗以外) | 通夜・葬儀(四十九日前) | 御霊前(ごれいぜん) / 御香典(ごこうでん) | 亡くなった方は四十九日まで霊としてこの世にいるという考え。 |
一般的な宗派 | 四十九日以降の法要 | 御仏前(ごぶつぜん) / 御供物料 | 四十九日をもって霊が成仏し、仏になるという考え。 |
浄土真宗 | 全期間(通夜・葬儀・法要すべて) | 御仏前(ごぶつぜん) / 御香典 | 亡くなったらすぐに仏になる(即身成仏)という教えのため、「霊」の概念を用いない。 |
【汎用性の高い表書き】
**「御香典」「御香料」**は仏教全般で使用できるため、宗派が不明な場合に無難です。
ただし、通夜・葬儀では「御霊前」、四十九日以降の法要では「御仏前」と明確に使い分けるのが最も丁寧です。
1-2. 香典袋(不祝儀袋)の選び方
項目 | 選び方 | 備考 |
水引の色 | 黒白(くろしろ)または双銀(そうぎん) | 結び切りまたはあわじ結びを選び、「二度と繰り返さない」という意味を込める。 |
袋のデザイン | 蓮(ハス)の花が描かれたもの、または白無地 | 蓮は仏教を象徴する花であり、仏式専用です。 |
2. 神道(神式)における香典マナー
神道では、仏教の「香典」や「供養」といった考え方はありません。「御仏前」は絶対に避けましょう。
2-1. 適切な表書き
儀式・時期 | 適切な表書き | 備考 |
通夜祭・葬場祭 | 御玉串料(おたまぐしりょう) | 玉串を供える代わりに金銭を奉納するという意味。最も一般的。 |
御榊料(おさかきりょう) | 榊(さかき)を供える代わりという意味。 | |
御神前(ごしんぜん) | 神様へのお供えという意味。 | |
御霊前(ごれいぜん) | 宗教を問わない汎用的な言葉として使用可。 |
2-2. 香典袋(不祝儀袋)の選び方
項目 | 選び方 | 備考 |
水引の色 | 黒白または双銀、地域によっては黄白 | 結び切りを選びます。 |
袋のデザイン | 白無地 | 蓮の花が描かれた袋は絶対に避けます(仏教専用のため)。 |
3. キリスト教における香典マナー
キリスト教も仏教のような「香典」の習慣はありませんが、弔慰金として現金を包むことが一般的です。宗派(カトリックとプロテスタント)によって表書きが異なりますが、「御花料」は共通して使用できます。
3-1. 適切な表書き
宗派 | 儀式・時期 | 適切な表書き | 備考 |
カトリック | 葬儀・告別式 | 御花料(おはなりょう) / 御ミサ料(おみさりょう) | 亡くなった方は神の御許に召されるという考え。 |
プロテスタント | 葬儀・告別式 | 御花料(おはなりょう) / 献花料(けんかりょう) / 弔慰料(ちょういりょう) | カトリックの「御ミサ料」は使用しない。 |
【共通して使用できる言葉】
キリスト教式全般で、**「御花料」「献花料」**を使用するのが最も無難です。
「御霊前」も使用できる場合がありますが、できれば「御花料」を選びましょう。
3-2. 香典袋(不祝儀袋)の選び方
項目 | 選び方 | 備考 |
水引 | 水引はつけない | 水引の代わりに、白い無地の封筒や、十字架やユリの花が描かれた封筒を使用します。 |
袋のデザイン | 白無地または十字架・ユリが描かれたもの | 蓮の花が描かれた袋は絶対に避けます。 |
4. 宗教・宗派が不明な場合の無難な対応
故人やご遺族の宗教・宗派がどうしてもわからない場合は、以下の対応が最も失礼がありません。
事前に確認する:ご親族や葬儀社に直接確認するのが確実です。
汎用性の高い言葉を選ぶ:
「御香典」:仏教徒である可能性が高い場合、宗派や時期を問わず使用できます。
「御霊前」:仏教(浄土真宗を除く)、神道、キリスト教など多くの宗教で使える汎用的な言葉ですが、浄土真宗の場合はNGとなるため注意が必要です。
香典袋は無地を選ぶ:蓮の花や十字架などの宗教的なモチーフが入っていない**「白無地」**の袋に、黒白の水引がついたものを選ぶと、ほとんどのケースで対応できます。
【番外編】表書きの書き方に関する基本マナー
薄墨を使う:筆や筆ペンで表書きや氏名を書く際は、薄墨を使うのがマナーです。「悲しみの涙で墨が薄くなった」という意味合いが込められています。
氏名:外袋の下段中央に、表書きよりやや小さめにフルネームで記入します。
中袋(内袋):中袋には表面に金額を記入し(例:金壱萬円也)、裏面に氏名と住所を記載します。金額は旧漢字(大字)を使うのが丁寧です。