香典の「金額を分ける」のはなぜ?7万円などの高額を包む際の最適マナーとルール
ご親族や親しい方の不幸に際し、弔意を表すために贈る香典(こうでん)。
金額が少なすぎても多すぎても失礼にあたるため、相場やマナーで頭を悩ませる方は少なくありません。特に、7万円など相場よりも高額を包みたい場合や、複数人で香典を出す際に、合計額が縁起の悪い数字になってしまうと、「どうしたらいいのだろう?」と迷ってしまいますよね。
実は、この疑問を解決する手段こそが、**「香典の金額を分ける」**というスマートな方法なのです。
本記事では、香典の金額を香典とお供え物に分けるなど、マナーを完璧に守りつつ、故人への最大限の弔意を示すための具体的なルールと解決策を分かりやすく解説します。
1. そもそも香典の金額を「分ける」必要があるのはなぜ?
香典の金額を分けるという行為は、単なる手続きではありません。弔事におけるタブーや忌み数(いみかず)を避け、ご遺族への心遣いを最大化するための、日本の伝統的な知恵なのです。
1-1. 【最重要】「割り切れる数」「忌み数」を避けるため
香典の金額は、奇数(1、3、5、7、10万円の位の数字)が基本とされています。
偶数(割り切れる数)のタブー: 偶数は「割り切れる」ことから、**「故人やご遺族との縁が切れる」**ことを連想させるため、基本的には避けられます。(例外として、夫婦連名での2万円は許容されることがあります。)
忌み数(いみかず)のタブー: 「4」(死)や**「9」**(苦)のつく数字は、縁起が悪いため厳禁です。(例:4万円、9万円など)
夫婦や兄弟、有志一同で香典を出し合った結果、合計額が9万円になってしまった場合、そのまま包むとマナー違反になります。このとき、**「香典の金額を分ける」**という手法が活躍するのです。
1-2. ご遺族の「香典返し」の負担を軽減するため
香典返しは、いただいた金額の**三分の一から半額(半返し)**が目安です。
あまりにも高額な香典を包むと、ご遺族は相場以上の香典返しを用意する必要が生じ、かえって負担をかけてしまうことになります。そのため、「気持ち」として多く包みたい場合は、香典とお供え物という形で金額を分散させることが、心遣いのマナーとなるのです。
2. 【具体例】忌み数を避けるための「金額の分割方法」
実際に香典の合計額が忌み数になってしまった場合、どのように金額を分ければ、マナー違反を回避できるのでしょうか。
この場合、**香典(現金)とお供え(供花・供物)**に分けるのが最も一般的な解決策です。
包みたい合計額 | 問題点 | マナー遵守の分割方法(解決策) |
4万円 | **「4」**で死を連想。偶数でもあるためNG。 | 香典:3万円 + お供え物(供花や供物):1万円 |
9万円 | **「9」**で苦を連想するためNG。 | 香典:7万円 + お供え物(供花や供物):2万円 |
6万円 | 偶数であるため避けるのが無難。 | 香典:5万円 + お供え物(供花や供物):1万円 |
このように、香典(現金)の金額を「奇数」に調整し、残りの金額を「供花」や「線香・菓子などの供物」という品物に充当することで、忌み数・偶数というタブーを完全に回避できます。
特に9万円を7万円と2万円に分ける方法は、高額な香典を包む際のプロの知恵として広く使われています。
3. 「7万円」を包む場合の判断基準とマナー
ご質問の**「7万円(70,000円)」**という金額は、奇数で忌み数を含まないため、マナー違反にはあたりません。
しかし、一般的に相場よりも高額にあたるため、包む際には以下のポイントを確認してください。
3-1. 7万円を包むのが最適な関係性
7万円という金額が適切になるのは、主に以下の血縁が濃い関係性です。
配偶者のご両親(義理の父母):30代後半〜40代以降の場合、5万円〜10万円が相場です。
ご自身の兄弟姉妹:40代以降の場合、3万円〜5万円が相場ですが、特に親しい間柄であれば7万円を包むケースもあります。
親族一同で高額を出す場合:親族間で相談し、故人の配偶者などに渡す金額を7万円にすることで、弔意を示すことがあります。
3-2. 7万円を包む際の「お札の枚数」マナー
金額が奇数でも、お札の枚数が偶数になるのは避けるのがマナーです。
7万円の包み方:
一万円札を7枚包むのが最も正式で望ましい方法です。
注意点: 5千円札などを混ぜて10枚以上の偶数枚にすると、「不幸が重なる」という連想につながるため、避けた方が無難です。お札はできるだけ最小限の枚数で、かつ奇数枚になるように調整してください。
4. 香典を「金額で分ける」以外の基本マナー
金額を分割してマナーをクリアしても、香典には他にも守るべき大切なルールがあります。
4-1. お札の向きと新札の使用
お札の向き: 中袋の表面に対して、お札の肖像画が裏側(下向き)になるように入れます。これは、「悲しみに顔を伏せる」という意味が込められています。
新札は避ける: 事前に用意する新札は「不幸を予期していた」という意味合いに取られる可能性があるため、適度に折り目のついた古札を使用しましょう。新札しかない場合は、一度軽く折って折り目をつけてから包むのがマナーです。
4-2. 連名で包む場合の名前の書き方
夫婦連名: ほとんどの場合、世帯主(夫)の名前のみを記入します。妻の名前も連名にする場合は、夫の氏名の左隣に妻の名前をフルネームで記入します。(近年は、中袋の裏側に夫婦の住所と連名を書くことも増えています。)
職場・友人一同: 代表者の氏名を表に書き、その左下に「他一同」と添えます。誰からの香典か分かりやすいよう、全員の氏名と金額を記した**別紙(内訳)**を中袋に入れるのが親切です。
香典は、故人との最期の別れに際し、ご遺族の負担を少しでも和らげたいという**「思いやり」の表れです。日本の弔事マナーの根底には、すべてこの「心遣い」**があります。金額や作法に迷った際は、「ご遺族に手間や不快感を与えないか」を判断基準にしてください。